日本企業におけるTCFD提言に沿った情報開示の実態(2022年度)
昨今の東証によるコーポレートガバナンス・コードの改訂により、プライム市場上場会社をはじめとする上場企業が、TCFD等の枠組みによる開示を求められたこともあり、TCFD提言に沿った開示が注目を集めています。
本記事は、日本取引所グループより発表された「TCFD提言に沿った情報開示の実態調査(2022年度)」のレポートをもとに、日本企業の開示における実態をご紹介させていただきます。
※調査対象の企業は、JPX日経インデックス400構成銘柄(2022年10月末時点)の全400社です
各媒体の発行状況
- 有価証券報告書:400社(100%)
- 統合報告書・アニュアルレポート:314社(79%)
- ESG/CSR/環境/サステナビリティレポート:141社(35%)
- TCFDレポート:42社(11%)
統合報告書・アニュアルレポートについては8割程度の企業が発行している状況ですが、サステナビリティレポートやTCFDレポートの発行はまだまだ限定的な状況です。
開示媒体別の状況
https://www.jpx.co.jp/corporate/news/news-releases/0090/co3pgt0000006bsk-att/tcfd2022jp.pdf
株式会社日本取引所グループ:TCFD提言に沿った情報開示の実態調査(2022年度) ※以下同様の出所
TCFDで開示が推奨される11項目の全てにおいて、統合報告書/アニュアルレポート上で開示が行われていることが多い状況です。
有価証券報告書にも、「③ リスクと機会」等の項目では相応数の企業が開示を行っていることがわかります。
TCFD提言11項目の開示状況
開示割合が高い上位3項目:「③ リスクと機会」、「① 取締役会による監視体制」、「⑩ スコープ1,2排出量」
開示割合が低い下位3項目:「⑤ シナリオに基づく戦略のレジリエンスの説明」、「⑧ ⑥⑦が総合的リスク管理に統合されているか」、「⑩ スコープ3の排出量」
11の開示項目のうち全てに言及がある企業は、400社のうち102社となった一方で、いずれの項目にも言及しない企業が82社存在する結果となりました。
TCFD提言11項目の開示状況の直近2年度における変化(2021・2022年度分)
2021年度対比で2022年度は、全ての項目において開示割合が上昇しました。
特に変化が大きい項目は、「「⑤ シナリオに基づく戦略のレジリエンスの説明」「⑥リスクを評価・識別するプロセス」となっています。
おわりに
こちらのレポートで、開示媒体や開示項目の対応状況などの概観をご理解いただけたかと思います。
(より詳しくお知りになられたい方は、こちらのリンクをご参照いただければと思います。)
また、上場企業を中心に各開示項目における開示は、質・量ともに更に進んでいくものかと想定されます。
しかし、TCFD提言に対応する情報開示は、初めて対応される企業をはじめとして、ハードルが高い部分も多々存在し、実際弊社でもお客様から様々なお問い合わせをいただきます。
オンドでは、Scope1,2,3排出量算定支援を含め、TCFDに関するご支援を行っておりますので、ご不明点やお悩みなどがあれば、まずはお気軽にご相談いただければと思います。