​経営支配力・財務支配力とは

支配力基準における経営支配力とは事業者に自らの経営方針を導入する権限を持つこと、財務支配力とは事業者の財務方針及び経営方針を決定する力を持つことをいいます。

GHGプロトコルのCorporate Accounting and Reporting Standardにおいて、事業者が温室効果ガス排出量を算定するにあたり、子会社などのグループ企業を算定に含めるか否かの組織境界を設定する方法に関するガイドラインが示されています。

事業者は出資比率基準または支配力基準のいずれかの連結方針に従ってサプライチェーン排出量を報告しなければなりません。

出資比率基準
対象の事業からの温室効果ガス排出量をその事業に対する出資比率に従って算定すること

支配力基準
支配下の事業からの温室効果ガス排出量を持株・出資比率に関係になく100%算定すること(出資比率が高くても支配力を持っていない場合は算入しない)

一度連結方針を選定した場合はその方針を全てのレベルにおいて適用する必要があります。

支配力基準でいう支配力は次の2つの考えによって定義をすることができます。

  1. 財務支配力
  2. 経営支配力

主に石油・ガス産業を除き、財務支配力と経営支配力のどちらの基準を用いた場合も支配結果が変わることはありません。

石油・ガス産業は複雑な所有・経営構造を持つ場合が多いため、財務会計や環境報告と整合させるためにはどのようにすればよいのか、検討する必要があります。

財務支配力基準については事業者がある事業活動から経済的利益を得る目的でその事業の財務方針や経営方針を決定できる場合は財務支配力を持つと言えます。

事業者と事業の関係の経済的実質が法的所有形態に優先するため、財務支配力基準のもとでは事業者がある事業に50%未満の持株・出資比率しか持っていない場合でも財務支配力を持つことがあります。

その経済的実質を評価するにあたり、議決権の影響を考慮することが一般的です。

この基準は国際財務会計基準と整合しているため、ある事業が財務会計の連結グループ・子会社としてみなされている場合はその事業もサプライチェーン排出量算定の目的においても財務支配力を持つことになります。

但し、この基準を支配力の判断基準として採用した場合も他の出資事業者が当該事業者と共同で財務支配力を持っている場合は、出資比率基準に基づいて算定される点は留意しなければなりません。

経営支配力基準についてはある事業者またはその子会社の一つを通じて経営方針をある事業に導入して行う完全な権限を持っている場合は経営支配力を持つと言えます。

但し、経営支配力を持つということはその事業に関して必ずしもすべての意思決定の権限を持っていなければならないというわけではありません。

例えば大規模な資本投資は共同の財務支配力を持つ全ての出資事業者の承認を必要とする場合があります。

経営支配力とは事業者が自らの経営方針を導入して実施する権限を持っていることを意味しています。

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