排出量取引(排出権取引)とは

排出量取引制度とは各国家・各企業同士などでの、温室効果ガス排出量の取引制度です。

排出量取引制度の種類は、2種類あります。

1. キャップ・アンド・トレード

キャップ・アンド・トレードは、期間内に排出できる温室効果ガス排出量に上限(キャップ)が設けられ、上限まで二酸化炭素排出量を減らすことが出来ない企業は、他の企業から排出権を購入(トレード)して、自社の上限を上げる方式です。

多くの取引で、このキャップ・アンド・トレードがベースライン・アンド・クレジットよりも使われています。

各排出枠の割当方法は、3種類あります。

  • a. ベンチマーク方式
    業種・製品に係る望ましい標準の排出量を定め、それをもとに無償で配分する方式
  • b. グランドファザリング方式:
    過去の排出実績に応じて、無償で配分する方式
  • c. オークション方式
    競売によって有償で配分する方式

2. ベースライン・アンド・クレジット

ベースライン・アンド・クレジットはキャップ・アンド・トレードと異なり排出枠は設定されません。

温室効果ガスの削減事業を実施した場合、実施しなかった時の排出量(ベースライン)を基準として、削減された量がクレジットとして発行される方式です。

排出権取引制度の流れは3つのステップに分かれます。

1. 排出してよい温室効果ガスの量を排出枠として決め、各国に割り当てます。

2. 各国がおのおのの企業に対して排出枠を分配します。

各企業は国に定められた排出枠を超えないように、排出する温室効果ガスの量を抑えます。

3. 排出量が超えてしまいそうな場合は、他企業と排出枠の取引ができます。

ここで、排出権取引が使われます。企業間だけでなく、国家間でも取引自体は可能です。

排出権取引の背景は以下の通りです。

排出量取引は、もともと二酸化硫黄を削減する際にアメリカで用いられた制度でしたが、温室効果ガスの排出でも使われるようになりました。

2000年代はじめに欧米、カナダ、ニュージーランド、韓国、中国でも制度として導入されておりますが、日本ではまだ全国レベルの排出権取引制度は確立されていません。

地方自治体(東京都と埼玉県のみ)でのみ、排出権取引制度を開始しています。

排出権取引の留意点として3点挙げられます。

1. カーボン・リーケージ

カーボン・リーケージとは、競争が激しい産業の企業が、排出量取引制度が緩い国へ脱出してしまうことを指します。

カーボン・リーケージが実際に行われてしまうと、かえって地球全体の温室効果ガス排出量を増やしてしまう場合もあると言われています。

2. 日本の多くの業界が「原単位」目標を主張している

日本国内においては、多くの業界が「総量規制」ではなく「原単位」での温室効果ガス削減目標を主張していることも問題の1つとされています。

これは、企業の排出量を見る視点が、企業が作る全ての製品ではなく、「原単位」という1つあたりの製品に対する温室効果ガス排出量であることを言います。

例えば「原単位(製品1つあたり)」で温室効果ガスを削減したとしても、大量に生産してしまうと総量としての温室効果ガス排出量は多くなってしまいます。

現状、経団連が定める「自主行動計画」では、企業は「総量規制」と「原単位」のどちらも選ぶことができるので、「温室効果ガス排出量を減らす」という本質から遠ざかる可能性があるのです。

3. 排出枠の設定が難しい 

排出枠の設定が困難であることも、排出量取引の問題点としてあります。

排出権取引の排出枠を厳しく設定した場合、各国・各企業は温室効果ガスの削減努力を強いることになります。

また排出量を下回る国・企業が減少するため、余剰排出枠の価格が上がります。

反対に排出枠の設定を緩くした場合、簡単に削減目標をクリアするため、売られる排出枠の数が多くなって価格が下がります。

これにより、温室効果ガス削減の自社での削減努力をせず、排出枠だけを購入した方が安くなるという事態も発生してしまいます


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