二国間クレジット制度とは

二国間クレジット制度(JCM: Joint Crediting Mechanism)とは、先進国が途上国と協力して温室効果ガスの削減に取り組み、削減の成果を両国で分け合う制度です。

二国間クレジット制度は、先進国から途上国への優れた脱炭素技術などを普及させ、地球規模での温暖化対策に貢献します。

同時に、先進国からの温室効果ガス排出削減への貢献を適切に評価し、先進国の削減目標の達成にも活用ができます。

二国間クレジット制度の背景は次の通りです。

二国間クレジット制度の背景としては、温室効果ガス排出量を減らしていくために、先進国だけではなく、途上国でも早期に低炭素化を行わなくてはならないことが意識されていることが挙げられます。

しかし、環境性能の高い優れた技術や製品の多くは、一般的に費用が高く、途上国にとっては投資回収が見込みにくいのが現状です。

そこで、二国間クレジット制度を使い、日本をはじめとする先進国が、途上国に対して、優れた低炭素技術や製品・システム・インフラの普及などの活動を実施します。

途上国の持続可能な開発に貢献しながら、その排出削減・吸収量の一部を先進国の削減量として適切にカウントし、地球規模での温室効果ガスの排出削減を促していくことを目指します。

二国間クレジット制度のパリ協定における位置づけは次の通りです。

二国間クレジット制度について、パリ協定(2015年にフランスで開催された国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21))にて採択された、気候変動に関する国際的な目標・取り組みを定めた国際条約)の第6条で規定されています。

パリ協定 第6条では、海外で実現した排出削減・吸収量を自国の排出削減目標の達成に活用することについて規定されており、二国間クレジット制度を含む協力的アプローチの活用が位置付けられています。

日本は、2013年から途上国と二国間クレジット制度にかかわる署名を始めています。

これまでに17か国(モンゴル・バングラデシュ・エチオピア・ケニア・モルディブ・ベトナム・ラオス・インドネシア・コスタリカ・パラオ・カンボジア・メキシコ・サウジアラビア・チリ・ミャンマー・タイ・フィリピン)を対象に、二国間クレジット制度を構築しています。

また、日本政府は「二国間クレジットの構築・実施により、民間ベースの事業による貢献分とは別に、毎年度の予算の範囲内で行う日本政府の事業により、2030年度までの累積で5,000万から1億t-CO2の国際的な排出削減・吸収量が見込まれる」と発表しています。

二国間クレジット制度(JCM)とクリーン開発メカニズム(CDM)の違いに関して

2012年までは、クリーン開発メカニズム(CDM: Clean Development Mechanism)などが国際的なクレジット制度の代表でした。

しかし、仕組みの複雑さなどの理由で、これらを補完するために、パリ協定で日本政府により二国間クレジット制度(JCM)が提唱されました。

二国間クレジット制度とクリーン開発メカニズムの違いを簡単に説明すると、二国間クレジット制度はクリーン開発メカニズムよりも簡易で、効率的で、柔軟なしくみになったといえます。

クリーン開発メカニズム は、全てのプロセスを国連気候変動枠組条約(UNFCCC) 理事会の下で実施していたため、事業の開発から実施まで多くの時間を要するなど、民間部門による事業実施のさまたげとなり問題視されていました。

それに対し、日本政府が提唱した二国間クレジット制度は、先進国と途上国の 二か国間のみで実施されるため、迅速かつ個々の途上国の実情にあわせて事業を進めることができます。

その他の両者の具体的な違いは、プロジェクトの対象範囲・排出削減量の計算方法・プロジェクトの妥当性検証の点などが挙げられます。

二国間クレジット制度(JCM)のメリットは、先進国・途上国のどちらにもあります。

1. 先進国・途上国共通のメリット

地球規模での温室効果ガス排出削減・吸収行動を促進できます。

ひいては、国連気候変動枠組条約の究極的な目的の達成に貢献ができます。

2. 先進国のメリット

先進国から途上国への優れた脱炭素技術などを普及させた際の、温室効果ガス排出削減・吸収量の先進国の貢献を定量的に評価することができます。

その評価を基に、先進国の削減目標の達成に活用できます。

3. 途上国のメリット

二国間クレジット制度による資金支援が投じられることで、環境性能の高い優れた技術や製品を安く導入することができます。

また、温室効果ガスの排出削減を効果的に進めることができます。